そしてまた一年が過ぎ…
2012年度の通常授業が終了となりました。
高校・大学受験生はまだ少し授業を続けることになりますが、
中学受験生たちは今日で最後。
付き合いも長くなった子達だけに、彼らへの想いも大きなものでもあります。
いえ、むしろ、彼らが教室にいるのがすっかり当たり前のことのように思えていた私にとって、
明日からの教室はまた寂しくなるのかもしれません。
中学入試。
その素晴らしさ・尊さを今日に至るまで説き続けてきた私ですが、
逆にその難しさには未だに苦しめられる日々でもあります。
中学入試は、子供達のための環境選びが最大の目的なのですが、
私にはそれ以上のものがあるように思えます。
10台成りたての子達が都道府県名・都道府県庁所在地、山地・山脈、川、平野、日本の歴史、憲法の条文、政治・経済のしくみ、などから始まり、
花の名前・分類、人体と消化器官・消化酵素、化学物質名とその特徴、星座、岩石の名前、
そして熟語、慣用句、ことわざなどまで、頭に叩き込みます。
時として理屈を後回しにしてまで、とにかく覚えます。
それはまさに詰め込み教育です。
そこでよく質問されるのですが、その詰め込みに意味はあるのかと。
大いにあります。
今日まで小・中・高生と多くの生徒と出会ってきましたが、
私は、その子たちの能力の幅を広げてあげるためには、
出来るだけ早い時期にキャパシティを広げるような教育・学習を施すことだと考えています。
例えば、漢字の学習。
もちろん漢字を覚えることそのものにも意味はあるのですが、
それ以上に私は「何か物事を覚える」ということの訓練であると考えています。
それが行く行くは英単語の暗記や歴史事項の暗記、
もっと言うならば将来の仕事における様々な記憶に繋がるのだと思います。
そして、中学受験生たちが避けて通ることの出来ない算数。
これには色んな要素が含まれています。
基本的な四則計算から始まり、
割合と比、平面・空間図形、速さ、特殊算と呼ばれる1次方程式・連立方程式内容を含む文章題、
そして高校数学で扱われる整数問題や場合の数に至るまで、
その内容はかなり奥が深いものとなっています。
しかもこれらの問題に挑むのは小学生なのです。
ここに最大の難しさがあります。
余程の精神力の持ち主でない限り、小学生はやはり子供。
「やる気はあります」とは言いながらも、心は簡単に折れてしまう生き物です。
そんな子供達を傍で支え、時に叱咤し、
「よ~し、難しそうだけど解いてみるか」という気持ちを抱けるまでに引っ張ってあげなくてはなりません。
「10人の子供が並んでいます。左から2番目の子と右から3番目の子の間には何人の子が並んでいますか。」
このような問題に対して、初めから10-(2+3)=5人、などといった計算を求めてはいません。
むしろ、「え~っと、10人並んでて…」などと言いながら、絵を描ける子、
これが理想的な姿です。
「センス」と呼ばれるものはあるに越したことはありませんが、
それだけでは片付けられないものが算数にはあります。
小学生たちの最大の敵でもある「根気」といったものも求められるのです。
これは算数に限った言葉ではありませんが、
苦しみながらも今出来ることをこつこつと継続し、
苦しみや様々な葛藤と戦いながら、
なんとか踏み出す一歩一歩の積み重ねで得られる喜びを経験することが出来るのです。
中学校に入学してからではこんな時間はなかなか取れません。
周囲の言うことも素直に受け入れられなくなってきます。
そして何よりも、少しずつ逃げる術を探る技を習得してしまうようになるのです。
高校受験を志した中学生たちに私がまず初めにしなくてはならないことが、
質と共に「量の確保」でもあるのです。
キートスの受験生たちが教室に「軟禁状態」になることはよく知られているようです…。
受験生諸君。
いよいよです。
明日からのテストによって、
今日までの頑張りに対する一つの答えが出ます。
ワクワク、ドキドキだね。
場合によっては、これ以上ない喜びを感じるだろうし、
場合によっては、これまでの言動を悔いることもあるかもしれない。
でも、その結果がどうであれ、
自分のしてきたことに対して一つの答えが出るということに喜びを感じて欲しい。
それは僕も同じです。
君達にどんなことをどれほど伝えられたのか、
明日からの答案返却に胸を高鳴らせていたりします。
そしてその時の君達の姿をもっと楽しみにしています。
そこには本当に合否だけでは語れないものがあるから。
なんだかんだあったけれど、今日までやり切ったね。
僕には何の後悔もありません。
それは君達も同じだろうと思う。
今のこのかけがえのない日々を共に過ごせたことを誇りに思います。
毎年言うことではあるけれど、
今日までずっと感謝の日々だったね。
本当にありがたかったと思う。
どうかそれだけは忘れないでください。
そして明日からもまたありがたいから。
さあ、試験を存分に楽しんできてください。
解けない問題があってもいいから、解ける喜びを噛みしめておいで。
健闘を心から祈っています。
頑張れ、受験生!
そして、ありがとう!